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自動車 Ansys® SPEOS
マツダ株式会社 様
「Ansys SPEOS」の物理的に正確な光学シミュレーションによって、試作回数の大幅削減と開発の効率化を実現

マツダ株式会社は2020年1月30日に100周年の節目を迎える。2010年以降に発表した、車両全体で最適化を図る自動車の要素技術「スカイアクティブ」によって、次々と魅力的な車種を発売して業績を伸ばしているが、こうした新技術の開発に当たってマツダでは、効率的な開発を追究するため、CAEへの投資を積極的に行っている。2019年5月に発売された「MAZDA 3 (旧車名:アクセラ)」は、同社が新世代商品群と呼ぶ新型車のトップバッターだ。このMAZDA 3のインテリアやライトの開発に、Ansysの3次元光学解析ソフトウェア「Ansys SPEOS」が大きな役割を果たしたという。

技術を“手の内化”するため「Ansys SPEOS」を導入

井上氏と中矢氏が所属する装備開発部は、シートやインストルメントパネル(インパネ)、エアコンルーバー、フロアマットなど人が座る部分を取り巻くいわゆるインテリアと、エクステリアのうちライトやバンパー、スポイラーなど主に樹脂でできた部品の開発を手掛ける部署で、井上氏は解析技術の開発やモデルベース開発の推進などを担当、中矢氏はライトの開発を担当している。

自動車のライティング技術は、光源が電球からLEDに変わっていく中で、デザインの自由度は大きく向上した。従来のライト開発において、性能の決定は、ある程度サプライヤーの知見ベースで行われていた。サプライヤー側は、ライトのプロフェッショナルとしてさまざまなツールを使った新しいライトを提案していたものの、マツダ側としては、その提案の良否をどう判断してよいか分からないという問題があった。さらに、法規の遵守や高い機能性も同時に求められる。このため設計はどんどん複雑・高度になり、開発初期からさまざまな要件を満たすべく、実際の光り方を評価する必要性に迫られた。

「他の領域、例えば、衝突安全や振動騒音では、設計段階から、シミュレーションによる性能検証、モデルベース開発を行っていました。一方、ライト部分を含めた内外装の装備品領域は実機での検証が中心で、光学領域は取り組みが周回遅れだと認識はありました。心地いい、見栄えが良いなどの人感覚を物理量評価で実現し、開発のフロントローディングを実現したいと思っていました。」(井上氏)

「Ansys SPEOS」の導入に当たっては、シミュレーションの精度の高さが決定的な理由となった。

「『Ansys SPEOS』のシミュレーションは、ライトの見た目の評価に必要な輝度と、法規チェックに必要な光度という、異なる物理量を一度の解析で評価できることもポイントでした」(中矢氏)

「マツダはモデルベース開発という考えを進めていますが、サプライヤーに任せる部品であってもそのからくり(原理や根拠)を理解した上で開発することを推奨しています。ツールを導入することで技術を学ぶことができ、効率的な開発につながるという資料を作って社内で説明し、導入を実現しました」(井上氏)

従来はまず「原理モデル」と呼ぶコンセプトモデルを何度か試作し、方針が決まってから詳細設計を進めるが、そこでも試作をし、最後に最終設計データによる実車モデル作成した。ライト金型を1度作成するのに数百万円から1000万円近くと高価で、試作の繰り返しでかなりの費用がかかっていた。それが「Ansys SPEOS」導入後は、試作回数の減少に貢献した。

「例えば、光らせたいところ以外が光ってしまう"光漏れ”エラーというのはCADデータでは分からず、経験を積んだエンジニアでも見落とすことがあります。『Ansys SPEOS』のシミュレーションでは、さまざまな角度からそういったエラーの確認ができるので、光漏れはほとんどなくなり、手戻りも少なくなりました」(中矢氏)

人間の感覚を定量化し、車ができる前に問題を除く

米澤氏が所属する車両実研部は実験と研究を合わせた"実研”部門で、クラフトマンシップ開発グループは、人間の身体・感覚・認知・感情を研究しながら、視界や表示機器類の視認性、質感などの感性領域の性能開発を受け持っている。導入当時、米澤氏は防眩領域を担当。導入の大きなきっかけとなったのは、ある車種においてセンタールーバーの周りにある銀メッキに太陽光が反射して眩しく、運転を妨げる問題が起きたことだった。その時はメッキ部品の形状変更が必要となり、金型修正に約1000万円の追加費用が生じた。さらに複数の車種で同様の問題が確認され、金型修正前の対策も迫られた。メッキ部品の形状修正自体も、ベテラン技術者が経験値ベースで行っていて、どのくらいの光が人間の目に眩しく感じるのか定量的に示せてはおらず、また眩しさを評価する米澤氏のようなスペシャリストも目で確認するだけで数値化はできていなかった。「光の量、波長がどれだけ精度よく解析できるか」「物体に光が反射するときの反射特性がどれだけ精度よく解析できるか」「輝度分布を二次元で再現して定量的に示せるか」という3点を評価の基準としていたが、「Ansys SPEOS」はいずれもクリアした。

「それまで使っていたツールは、設計やデザインの部署が作成した3Dデータをファイル変換して、自分でメッシュを切る必要があり、形状精度が落ちてしまっていました。『Ansys SPEOS』は弊社が使っている3D CAD『NX』(Siemens PLM社製)にアドオンで使えるので、形状精度を落とさずにシミュレーションができます。これも大きなポイントでした」(米澤氏)

米澤氏のグループでは、車室内の部品がフロントガラスの内側に反射して前方の景色が見にくいという問題にも対処していた。現状のデザイン上の問題点を定量的にデザイナーに示すことができなかったため、改善の必要性を理解してもらうことが難しかったという。「Ansys SPEOS」の導入によっては数値による定量評価”が可能になったことで、デザイナーに改善提案ができるようになった。

「MAZDA 3」の開発ではライトやインテリアの設計に「Ansys SPEOS」を積極的に活用した。新車発表時に世界各地で開かれるジャーナリスト試乗会では、「視界がすごくすっきりして見える」と好評だった。

サプライヤーとの関係が変化し、より効率的な開発につながる

「Ansys SPEOS」の導入後は、サプライヤーとの関係にも変化があった。例えばライトでは従来、デザインとしてやりたいこと、点灯のイメージを伝えて、サプライヤーの知見の中で提案してもらう一方通行の開発スタイルだった。最近では、マツダ側で詳細設計は行わないものの、シミュレーションを行うことでサプライヤー側に提案するような関係に変化しつつあるという。

「従来の開発スタイルと大きく違うのは、ライト周辺部の設計がまだ固まっていない段階からコンセプトが決められて、コストを最適化できることです。やりがいがありますし、やったことが量産開発の中でもすぐに結実しやすいと感じています。」(中矢氏)

この変化はサプライヤーからもポジティブに受け止められており、早い段階で仕様を決めてお互いに最適設計を進めた方が、商品性を落とさず効率的な開発ができるという認識になっているという。サプライヤーと一緒に「Ansys SPEOS」でシミュレーションしながら、エンジニアが同じ目線でリアルタイムにやりとりして、短期間で仕様を決めるスタイルになりつつある。「限られた開発期間の中でクオリティの高いものを作ろうとするには、やり方から変えないといけない」と中矢氏は言う。

「Ansys SPEOS」導入によるこうした変化は、サプライヤーとだけでなく、社内のデザインや設計の部署とのやりとりでも起きている。

「どんなに良くなると言葉で説明しても、価値を理解してもらうのは難しかったのですが、『Ansys SPEOS』で視覚化することで、ここまでやったらこんなに良いことがあるんだと理解してもらいやすくなりました。デザイン担当者に良くなることを納得してもらえるからこそ、デザイン変更に応じてくれます。それを、実際のものを作らずに見せることができるのは大きな利点です」(米澤氏)

※本ページに記載されている情報は取材時におけるものであり、その後変更されている可能性があります。予めご了承下さい。

使用したAnsys製品

Ansys® SPEOS
3次元光学解析ソフトウェア

Ansysによる主な利点

  • 物理ベースの光をシミュレーションする精度の高さ
  • 3D CADにアドオンしてデータ変換の手間なく利用できる
  • 試作費用削減(開発の際と初期にデザイン確認するための試作品製作)
  • 設計変更抑制(金型修正をなくす。)
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マツダ株式会社 https://www.mazda.co.jp/
所在地:〒730-8670 広島県安芸郡府中町新地3-1
マツダ株式会社は、1920年に東洋コルク工業株式会社として創立。1927年に東洋工業株式会社に改称、1929年に2サイクル250ccエンジンを試作して以降、3輪トラックメーカーとしての道を歩み始め、戦前から戦後にかけて多数の3輪トラックを製造販売した。1960年11月には4人乗り軽乗用車「R360クーペ」を発売しヒットさせる。1967年にはロータリーエンジン搭載の「コスモスポーツ」を発売している。70年代には「カペラ」「サバンナ」を発売、1984年にマツダ株式会社に社名を変えた後、1989年に「ユーノスロードスター」を発売した。その後も「デミオ」「アクセラ」など人気車種を加えている。2013年に始まる構造改革プランでは、高効率な開発や生産を追究し、CAEを使ったものづくりを積極的に取り入れている。資本金は2,840億円、従業員数は2万3,087人(単体)、自動車販売台数は約157万台、売上高は365,647億円(上記数字はいずれも2019年3月31日時点)。

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