社内ネットワークに接続できない原因と解決策|無線LANの不安定を根本から改善する方法とは?
表面化する事象の大半は「つながらない」「不安定」などに集約されますが、原因はさまざまで、時には意外なものが障害を引き起こす要因となる場合もあります。
本記事では、ネットワークがつながりにくくなるよくある原因と解決策に加え、見落とされがちな原因をトラブル事例とともに紹介します。円滑なネットワーク環境を構築したいとお考えの方はぜひご覧ください。
よくある社内ネットワーク接続トラブル
社内ネットワークでは、日々さまざまな接続トラブルが発生します。
IT管理者であれば、以下のような問い合わせを受けた経験があるのではないでしょうか。
IPアドレスが取得できない
パソコンを起動してもネットワークに接続できず「IPアドレスの取得に失敗しました」といったエラーメッセージが表示されるケースです。
DHCPサーバーからのアドレス割り当てが正常に行われていない可能性があります。
一部の端末だけが接続できない
特定のパソコンや部署でのみ発生する接続障害です。
他の端末は問題なく通信できている一方で、特定の端末だけがネットワークに参加できない状態を指します。
接続はできるものの通信が極端に遅い
ネットワークへの接続自体は成功しているものの、Webページの読み込みやファイルのダウンロードに時間がかかる状態です。
業務効率に大きな影響を与えるため早急な対応が求められます。
特定アプリ(Teams/Zoomなど)で頻繁に切断される
Web会議ツールでの通話中に音声や映像が途切れる、あるいは接続が切れてしまうトラブルです。リモートワークやオンライン会議が日常化した現在、影響が大きい問題のひとつといえます。
これらのトラブルは、発生範囲や接続方法によって確認すべきポイントが大きく異なります。
次章では、効率的に原因を特定するための基本的なチェック方法を見ていきます。
社内ネットワークのトラブル原因を特定する際に、まず確認すべきポイント
ネットワークトラブルが発生した際、闇雲に対応するのではなく、まず状況を整理することが重要です。最初に確認すべき二つの観点を押さえて切り分けを行いましょう。
接続できない範囲はどこか
トラブルの影響範囲を把握することで、問題の発生箇所を絞り込めます。
(1)一部の部署や特定のパソコンのみ接続できないケース
特定の範囲で発生している場合、ネットワーク経路や端末側の設定に問題がある可能性があります。
見るべきポイントは以下のとおりです。
- 接続ハブの故障(LANケーブルの破損やハブの差込口の不良など)
物理的な接続部分は、経年劣化により不具合が生じやすい箇所です。接続ハブやスイッチでは、LANケーブルの破損やポートの故障がないか確認します。 - 中継機器やルーターの不具合
中継機器については、フロアスイッチやルーターの電源・リンクランプの状態を確認します。 - セキュリティソフトやファイアウォールが通信を遮断していないか
セキュリティ設定では、ソフトウェアやファイアウォールが通信を遮断していないか確認しましょう。特にソフトウェアの更新後に問題が発生した場合は注意が必要です。 - 電波干渉を起こしていないか
無線LAN環境では、電波干渉が特定エリアだけを不安定にすることがあります。
(2)社内全体でパソコンが接続できないケース
社内全域で通信できない場合は、ネットワーク機器や回線側のトラブルが疑われます。
見るべきポイントは以下のとおりです。
- ONU(終端装置)に故障や破損がないか
ONU(終端装置)のランプ状態を確認します。
通常は緑色のランプが点灯していますが、赤色やオレンジ色に変わっている場合は回線に問題がある可能性があります。 - ルーター/スイッチ/アクセスポイントの電源が適切に入っているか、故障していないか
基幹ネットワーク機器では、以下の機器の電源が入っているか確認し、故障していないかも確認します。
- コアルーター
- コアスイッチ
- メインのアクセスポイント
また、インターネットサービスプロバイダ(ISP)側で通信障害が発生していないか、公式サイトやSNSでの情報も確認ポイントの一つです。大規模な障害の場合、復旧を待つしかないケースもあります。
接続方法が有線LANか無線LANか
接続方法によっても、確認すべきポイントや対処法が異なります。
有線LANの場合
ケーブル接続で通信できない場合、物理的・設定的な原因を確認します。
確認すべきポイントは以下のとおりです。
- LANケーブルのコネクタが緩んでいないか、差し込まれているか
まず、LANケーブルのコネクタが緩んでいないか、しっかりと差し込まれているかを確認します。
コネクタが確実にロックされるまで差し込むのが正しい接続方法です。 - LANケーブルが断線・破損していないか
LANケーブルが断線していないか、被覆が破れていないかを目視で確認しましょう。
デスクの下や壁際など、人が踏みつけやすい場所は特に注意が必要です。
無線LANの場合
無線LAN環境では、電波干渉やネットワークの混雑が主な原因となります。
確認すべきポイントは以下のとおりです。
- パソコンの設定でWi-Fiが無効になっていないか
パソコンの設定でWi-Fiが無効になっていないか/機内モードが有効になっていないかを確認します。
誤って無効化してしまうケースもあるため、注意が必要です。 - 無線アクセスポイントやルーターに不具合がないか
無線アクセスポイント(AP)やルーターに不具合がないか、電源やステータスランプの状態を確認します。正しいアクセスポイント(SSID)に接続されているかもチェック事項です。 - 正しいアクセスポイントに接続されているか
複数のSSIDが存在する環境では、意図しないネットワークに接続してしまうことがあります。無線LANのトラブルは有線LANと比べて確認すべき項目が多く、原因の特定が複雑になりがちです。
次章では、無線LAN特有の接続トラブルとその解決策を解説します。
無線LANの接続トラブルの主な原因と解決策
無線LANでは、複数の要素が同時に絡み合って問題を引き起こすことが多く、原因の切り分けと再発防止が重要です。
ここでは、無線LAN特有のトラブル原因とその解決策を解説します。
スイッチやルーターの不具合
ファームウェアの不具合や設定の競合によって、通信が不安定になるケースがあります。
対策方法は以下のとおりです。
- 機器を再起動する
ネットワーク機器は長時間稼働し続けることで、メモリ不足や処理の遅延が発生することがあります。まずは機器の再起動を試してみましょう。 - 電源ケーブルやLANケーブルを差し直す
電源を切り、30秒ほど待ってから再度電源を入れることで、多くの問題が解決します。コンセントやLANケーブルの接続部分が緩んでいると、断続的な通信障害を引き起こすことがあります。しっかりと差し直して、障害を防ぎましょう。 - 通気口や筐体内部のホコリを清掃する
また、機器の通気口にホコリが溜まると熱がこもり、動作が不安定になる原因となります。
定期的に清掃することで、機器の寿命を延ばすことにもつながります。
IPアドレスに原因がある
IPアドレスとは、ネットワーク上で各機器を識別するための番号です。
通常はDHCPサーバーが自動的に割り当てます。しかし、何らかの原因で他のPCと同じIPアドレスが重複してしまうと、接続が不安定になることがあります。
IPアドレスの競合は、固定IPアドレスを設定している端末がある環境や、DHCPサーバーの設定に問題がある場合に発生しやすくなります。
IPアドレスを再取得することで、正しいアドレスが割り当てられ、問題が解決するケースもあります。
再取得後も問題が続く場合は、DHCPサーバーの設定やIPアドレスの割り当て範囲を見直す必要があります。
- コマンドプロンプトを管理者権限で開く
- ipconfig /release を実行し、IPアドレスを解放
- ipconfig/renewを実行して新しいIPアドレスを取得する
セキュリティソフトやUTMに原因がある
UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)とは、ファイアウォールやウイルス対策、不正侵入防止などの複数のセキュリティ機能を統合した機器です。
セキュリティソフトやUTMは、未知の脅威から守るために厳格なフィルタリングを行います。しかし、セキュリティソフトやUTMに不具合が生じると、時には正常な通信まで遮断してしまうことがあり、接続しづらくなることがあります。
特に、ソフトウェアの更新後に問題が発生した場合は、新しいセキュリティポリシーが原因の可能性があります。その場合は一時的にセキュリティ機能を無効化し、接続が改善するか確認した上で、問題が解決した場合は除外設定や許可ルールを追加します。
注意点として、セキュリティ機能を無効化する際は必ず一時的にとどめ、検証後は必ず有効に戻すことが重要です。
電波干渉を受けている
オフィスでは複数の無線機器が電波を発しており、干渉により速度低下や切断が発生することがあります。
- 周辺機器(電子レンジ、Bluetooth機器など)の干渉
Wi-Fiで使用される2.4GHz 帯は、電子レンジやBluetooth機器、コードレス電話などの多くの機器と周波数が重なるため、電波干渉が発生しやすい特徴があります。特に電子レンジを使用中は、近くのWi-Fi接続が著しく遅くなったり切断されるケースもあります。 - 近隣オフィスのネットワークが同じチャネルを使用している
オフィスが密集している環境では、近隣のネットワークと同じチャネルを使用していることから電波干渉しやすいです。アクセスポイントのチャネル設定を変更すると、干渉を回避できる可能性があります。 - アクセスポイントのチャネル割り当てが不適切
隣接するチャネル同士で電波が重なったり、特定のチャネルに多くのユーザーや機器が集中してしまうことで、通信の停滞や切断が発生することがあります。
電波干渉の詳しい原因や具体的な回避方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
「電波干渉とは?発生する原因・回避方法をTeams会議の障害事例とともに紹介」
見落とされがちな原因「端末の増加」 なぜ端末増加が接続不良に繋がるのか?
端末数が増えると、アクセスポイント(AP)ごとの通信処理が増加します。これにより、パフォーマンス劣化が起こりやすくなり、接続不良に繋がります。
AP増設やチャネル最適化で改善するケースもありますが、それでも根本的に解決しない場合があります。
一見適切な設計をしても速度低下が続く場合、以下のような「隠れた原因」が潜んでいます。
チャネル使用率が上がる
Wi-Fiでは、Broadcast・Multicast(BC/MC)通信が最も低いレートで送信されるため、無線帯域を圧迫してしまいます。
端末数が増えるほど、同一VLANの全APから同時にBroadcastが送信されるため、無線空間の利用時間が急増します。
通常は、実データのやり取りであるユニキャスト通信が大半を占めます。しかし、BC/MCが無線空間の多くを占拠してしまうと、低速トラフィックが増えてしまいます。
その結果、全体のチャネル使用率が高まり、他の通信も遅延してしまうという悪循環が生まれます。
トラフィック分布の比較
一般的な環境では、ユニキャスト(端末ごとに個別にやり取りされる通信)がほとんどを占めており、Broadcast/Multicast(複数の端末に一斉に送られる通信)はわずかです。
しかし、問題が発生している環境では、BC/MCの比率が異常に高くなっています。
実データのやり取りであるユニキャストが圧迫され、端末のパフォーマンスが大きく低下する結果となっていました。
Wi-Fi接続では、APと端末が通信する際に次の2種類のレートを使用します。
- Tx Rate(実通信の伝送レート)
Tx Rateはアプリケーションとの実通信で利用されるレートです。 - Basic Rate(管理・制御フレームのレート)
Basic RateはAPと端末間の制御・管理フレームのレートで、BC/MCの設定値です。
重要なのは、Basic rateは運用で定めた最低レートで送信され、BC/MCの送信レートの下限として機能する点です。
例えば、Tx Rateで最低が6Mbps、最高が150Mbpsの場合、Basic Rateは6Mbpsとなります。
レートが低いほど無線空間を占有する時間が長くなるため、6MbpsのBroadcastトラフィックが挟まると、他の端末は待機状態になってしまいます。
BC/MCの2つの特徴
(1)最低レートで送信される(Basic rateに依存)
BC/MCは最低レートで送信されるため無線空間を長時間占有します。
(2)同一VLANの複数APから送信され得る
同一VLANのすべてのAPから送信されるため、全体としてパケット量が膨大になります。
Broadcast・Multicastトラフィックを抑制する2つの対策
BC/MCによる負荷を減らすには、2つの視点からアプローチする必要があります。
端末・アプリ側での対策
ARP、DHCPは接続のために必須です。これらは停止できません。
- AirPlay、GoogleCast、Amazon TV
AirPlayやGoogleCastはmDNS、UPnPを使用しています。 - IoT端末への同期・指示・通知
IoT端末は同期や指示を出す時、通知をする時にBC/MCを利用します。
対策としては、端末のAirPrint無効化、プリンターのAirPrint無効化、インフラ側での停止が有効です。AirPrintが有効でも使っていないことが多いため、インフラ側で停止することが効果的です。
BC/MCを大量に出している端末・アプリケーションを見つけて対策しましょう。
Wi-Fiインフラ側の対応
Broadcast/Multicastトラフィックに対して、以下の3つの対策が有効です。
フィルタリング
- 重要なもの以外をDrop(DHCP、ARP、IGMP以外)
- ARPのUnicast変換
- Multicastの選別Drop
DHCP、ARPなどの重要なもの以外はDropします。
ユーザーテーブルに登録された宛先のARPはユニキャストに変換可能です。IGMPなどの重要なもの以外はDropすることで、BC/MCを最低限に減らせます。
Unicast化
- Unicastへの変換
- 閾値(しきい値)設定によるMulticast復帰
ユニキャストは宛先が1つとなります。
高レートのTx Rateによる送信になるため、他の端末の待機時間を大幅に短縮できます。一定数以上の端末へ同時送信する場合は、閾値を設定し、閾値超過時はマルチキャストに戻します。
送信レートの最適化
- 18Mbpsまたは24Mbpsへの変更
- DTIM間隔の延長
これを18Mbpsもしくは24Mbpsなどに変更できます。
送信を高速化することで、他の端末の待機時間を短縮可能です。DTIMの間隔を長くすることで、パワーセーブに入った端末へのデータ送信頻度を調整できます。
無線空間の利用効率を改善することもできます。
【事例】端末増加で社内ネットワーク(無線LAN)のパフォーマンスが劣化
ある大手企業では、接続端末の増加に比例して、無線LANの速度低下が発生していました。
対策として必要十分な台数のAPが増設されており、APの配置やチャネル設定も設計段階で適切な対応が取られていました。しかし、様々な対応を試みたもの、長らく状況は改善されませんでした。
HPE Aruba Networkingの対策チームが実際の電波状況を確認したところ、チャネル使用率が非常に高くなっていることが判明。さらに詳細な調査を実施した結果、一般的な環境に比べてBroadcast/Multicast(BC/MC)の量が異常に多く、無線帯域の約半分を占有していることがわかりました。
対策として、BC/MCのフィルタリング、Unicast化、送信レートの最適化を実施した結果、BC/MCの負荷は劇的に減少。チャネル使用率も正常値となり、本件の無線パフォーマンス問題は解消しました。
より詳しい事例内容や対策は、以下の資料をご参照ください。
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無線LANトラブルは発生を避け難い一方、適切な手順で解決可能です。重要なのは、原因の本質を見極めることです。
しかし、無線LANでは複数の要素が同時に絡み合って問題を引き起こします。原因の特定が困難なケースも少なくありません。電波干渉、端末増加、設定ミス、機器の不具合など、様々な要因が複雑に影響し合うためです。
そこで有効なのが、原因の可視化です。
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